森法律事務所から一言

自筆証書遺言の無効性を争う紛争は、近時、激増しており、当事務所でも、常時、多数の案件を抱えております。

一番多い主張が遺言者の能力を争う場合で、次が偽造だという主張です。

方式違反による有効性を争うケースは、少数です。

 

いずれの争いも、裁判所が求める主張と提出証拠は決まっており、この点を効果的に主張・

立証する必要がありますが、当事務所は、多数の案件を永年にわたって処理することにより、

そのノウハウを獲得しています。

 


自筆証書遺言 Q&A

自筆証書遺言の有効要件はなんですか?
自書、自書能力の存在、日付、氏名、押印です。
遺言は自書でなければならず、したがって、自書能力が要求されます。添え手をする程度ならいいですが、これを超えたら自書とはいえません。押印は認印でもかまいません。
氏名も、戸籍上の氏名でなくても、通称やペンネームでも結構です。
実務で一番問題になるのは日付です。
自書能力のない方は、公正証書遺言か秘密証書遺言を作成するしかありません。
自筆証書遺言のメリット・デメリットは何ですか?
誰にも知られず簡単に作成できる半面、方式不備による無効、偽造のリスクがあります。 自筆証書遺言は無効とか偽造で訴訟沙汰になるケースが多い案件です。
安い、早いが特徴ですが、リスクも大きいですね。
自筆証書遺言の無効原因は、どんなものがありますか?
方式不備、遺言能力、偽造、公序良俗違反です。自筆証書が無効になる多くのケースは様式です。押印がない、日付がない、というケースが大部分です。
しかし、紛争に発展するケースは、遺言能力、偽造を理由とするケースが大部分です。
まれに、内容の無効が争われる場合があります。例えば、妾に全財産を遺贈したような場合です。
父の残した遺言の日付が平成2016年1月1日となっていました。有効でしょうか? [方式不備]
有効です。
日付の有効性は、様式違反を争う事件で多い類型です。
日付は日が特定されるものでなければならず、「平成26年1月」という記載では無効です。
しかし、
1、特定されるなら、例えば「平成25年敬老の日」でも構いません。
2、誤記であることが明らかな場合も、有効です。平成2016年は、明らかに西暦の「誤記」ですから有効です。
父は60歳の時に自筆証書遺言を書いたものの日付と署名はせず、10年後、病室でその 遺言書に署名・押印し、10年前の日にちを記載しました。有効でしょうか?[方式不備]
無効です。
日付は、書いた日に、書いた日を記載しなければなりません。本件は、10年してから日付を記載しています。また、意図的に虚偽の日にちを記載したときは、それが特定できる日でも無効となります。
自筆証書遺言が偽造かどうかを争っている裁判で、相手が、「偽造だ」という私的鑑定書 を提出してきました。この鑑定書を裁判官は信用しますか?[偽造]
私的な鑑定は、原則として裁判所は相手にしません。
遺言の偽装が争点の場合、双方が私的鑑定を出し合うことが多いようですが、裁判所は、このような私的鑑定は、依頼者のバイアスがかかっているとして相手にしません。
そのような私的鑑定は、ほとんど証拠価値はないものと思ってください。
私的鑑定がだめなら裁判所で鑑定人を選任してもらい、鑑定してもらうことはできますか?[偽造]
裁判所は、筆跡鑑定そのものを疑問視しています。
筆跡鑑定は、遺言の筆跡と遺言者の書いたほかの筆跡を比較して似ているかどうかを判断することで行います。問題は、対比する書面です。
筆跡というのは、年齢、疲労、精神状況、速度、等でいくらでも変わります。どの書面と対比するかで結論はいくらでも異なります。
一方、遺言書を偽造する場合は、必死に筆跡を似せて書きます。
そういう状況で似ている、似てないを論ずること自体が意味をなしません。
東京地裁の裁判官の研究グループは、明確に、筆跡鑑定は意味がないという論文を発表しています。
自筆証書遺言が偽造かどうかで裁判所が一番重視する点は何ですか?[偽造]
裁判所が、一番重視する点は、「そのような遺言書の存在・内容が自然か不自然か」 という点です。
「そのような遺言書の存在・内容が自然か不自然か」は、遺言書の作成経緯、遺言者と相続人らの生活状態、遺言者の作成時における精神・身体状況、遺言者のその後の行動等を総合的に考慮して判断します。
例えば、被相続人Aが全財産を相続人Bに相続させるという遺言書があったとして、もし相続人Bが、永年、Aと同居し、献身的に介護したり、家業を継いでいたら、そのような遺言書があったとしても不自然ではありません。
しかし、相続人Bが、被相続人Aとは、犬猿の仲で、生前、裁判沙汰かなんかが起きていたら、そういう遺言書をあえて記載したという特別の事情でも証明しない限り、筆跡が被相続人にそっくりでも、そのような遺言書は、おかしいということになります。
遺言内容が自然なら偽造と判断されませんか?[偽造]
発見のプロセス、遺言書の数、遺言者の心身の状況もチェックされます。
発見のプロセスが不自然な場合は、やはりその遺言書の成立が疑われます。
例えば、遺産分割協議をしていて、相続人Aの望むような進行ではない状態で、突然、 相続人Aが、「実は遺言書を預かっていた」などと言って、自筆証書遺言を出す場合です。 遺言書がやたらと多数存在し、その内容が相互に矛盾するような場合も、偽造を疑われることになります。
被相続人の心身の状態も重視します。目が不自由な人が、やたらと複雑な漢字を使って自筆証書遺言を作成したとか、意思能力がないとは言わないまでも十分でもない人が、やたらと複雑な自筆証書遺言を作成したとなると、これも、そのプロセスに合理的な説明がない限り、筆跡が被相続人にそっくりでも、そのような遺言書は、おかしいということに なります。
遺言をするにはどの程度の能力が必要ですか?[遺言能力]
遺言をしたらどうなるかがわかる能力です。 遺言は商取引ではなく身分行為ですから、その行為が自分にとって財産上有利か不利かを判断する能力は不要です。ただ、こういう遺言を書いたらどうなるんだろうという程度の能力は必要です。
民法は、その基準を満15歳としていますが、遺言者の最終意思ですから、最小限必要な精神能力があれば足ります。
成年被後見人は、遺言能力がないですか?
ある場合とない場合があります。
成年被後見人になるかどうかの境目は「事理弁識能力」であり、「意思能力」では、ありません。
その者が、日常生活の取引等の法律行為で、それが有利か不利かを判断し、身を守るこ とができる能力が事理弁識能力です。遺言を作成する能力とは、判断基準が異なります。
したがって、成年被後見人であっても、遺言能力がない場合とある場合があります。
なお、民法973条では、成年被後見人が遺言をするためには、事理弁識能力が一時回復し ているときにおいて、医師二人以上の立ち合いが必要とされています。
また、後見人の影響を受けやすいことを考慮して、後見人やその家族(配偶者、子供、孫等)に有利な遺言は無効とされています。
後日、遺言が、能力がなかったとして無効とされないために注意する点は?
訴訟に耐えうる証拠を確保しておくことです。
遺言者が高齢あるいは記憶力等で多少なりとも問題があるときは、訴訟で無効を主張されても耐えうる証拠を確保しておく必要があります。
作成経過を撮影したビデオ、録音等を確保しておき、問題になった時に、他の相続人にそれを見せれば訴訟にならずに済む場合もあります。
また診断書や医療記録の確保も重要です。
こういう場合は、やはり経験豊富な弁護士にアドバイスをうけたほうがいいでしょう。