結局、あの改正相続法は何だったのか?

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最近の東京家裁の遺産分割事件では、代わる審判で終了する件数が増えてきて、令和7年に限定すれば、調停成立が41件に対し、代わる審判による解決が半数の20件、取下げ・なさずが25件、不成立が14件です。約6割が審判に移行せず成立し、その3分の1は「代わる審判」ということになります。また4分の1が調停を取下げるか「なさず」で終了しております。代わる審判の割合が急速に増えたのはなぜでしょう?

さて、改正で一番話題になったのは相続開始後の無断処分のみなし財産制、配偶者居住権、特別寄与売料請求権の3つですが、このうち、相続開始後の無断処分のみなし財産制は相応に主張されていますが、他の二つは、ほとんど利用されておりません。

特に配偶者居住。東京家裁で、この権利を主張する例はほとんどありません。というか、この用語が使われること自体がありません。弊所の経験で、相手方代理人が、妻だから、遺産分割と関係なく、当然に配偶者居住権があると主張して、ビックリした経験が一件あるだけです。その代理人は、その後も、独特な主張をされていましたが、結局、自分の勘違いが分かると、さっさと主張を引っ込めました。

配偶者居住権は、おそらく、地方に行くと需要があるのかもしれません。農家で大きな家が相続財産になっている、他に、これという財産はない、代償金が払えない、売ると言っても買い手もつきそうもない、こういう場合は、配偶者に配偶者居住権を設定し、子供達みんなで家を相続し、配偶者が亡くなったら、近所の人に二束三文で処分する、こういう場合は、ちょうど配偶者居住圏の設定で収まるかもしれません。

しかし、東京の場合は、自宅が相応の値段で売却できます。配偶者の方は、100人中99人、売ることのできない配偶者居住権より現金が欲しいと言います。その現金で、他の家を購入したり、施設に入ることができます。他の相続人も配偶者居住権を設定された土地なんか誰も取得希望しません。買い手がつかないからです。

その結果、東京家裁では、配偶者居住権が忘れられた存在になり、話題にもなっていません。税理士さんが、節税で利用しているだけです。

特別寄与料請求権、これも、あまり利用されていません。令和5年には5つの事件から8件が審判継続、令和6年には5つの事件から9件が審判継続、しかし、令和7年はゼロ件!申立期間が短いのと金額がそれほど期待されないことから、履行補助者論で、遺産分割調停の中で主張したほうが良いと考えているのかもしれません。

さて、今年は、令和8年ですが、令和10年からは、いよいよ具体的即続分の主張制限が開始されます。あ、もう、あなた残念ながら特別寄与主張できません、などいったら、どうなるか、ちょっとしんぱいです

追記

弁護士のための財産分与実務のポイントの販売が好調なせいか、なぜか、三部作(①弁護士のための遺産相続実務のポイント 遺産分割・遺言無効・使途不明金ほか遺産分割の付随問題 ②法律家のための遺言・遺留分実務のポイント ③法律家のための相続判例のポイント)が昨年暮れから再び売れはじめ、品切れ状態になっています。もう6年ぐらい前の本なんですが、なんででしょうか?

なお、弁護士のための財産分与実務のポイント、12月5日発売であるにも関わらず、先週東京の弁護士会館等の書店で、二か月半たっていまでも、ベストテン入りし、先週は第7位、先々週は第5位でした。同じベストテンに入っている本は、全て今年の2月か1月販売書籍。ここまで、先生方に歓迎していただけるとは思っていませんでした。

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この記事を書いた人

1951年新潟県出身。中央大学法学部卒業。東京弁護士会所属。1981年弁護士登録。1983年森法律事務所設立。家事事件・不動産事件等が中心業務。主な著作に『法律家のための相続判例のポイント』・『法律家のための遺言・遺留分実務のポイント』・『弁護士のための遺産相続実務のポイント』(いずれも日本加除出版)などがある。趣味はカメラを片手に旅すること。森法律事務所:東京都中央区新川2-15-3 森第2ビル TEL:03-3553-5916