相続人の範囲

相続人の範囲について

遺産分割を行うには、まず相続人が誰かを確定する必要があります。
相続人の範囲・相続分ついては、下記の図のとおりです。

配偶者 1/2第1順位子 1/2
配偶者 2/3第2順位祖父母等 1/3
配偶者 3/4第3順位兄弟姉妹 1/4

元東京家裁調停委員の視点

相続人の範囲でもめることは少ないのですが、もめるときは徹底的にもめます。年齢差のある婚姻、特に外国籍の方との婚姻だと、当初から偽装離婚だと決めてかかっているようです。

それなら、人訴で解決して確定判決をもらい、あらためて遺産分割を申立してください、と申し入れても、「それも絡めて遺産分割をする」と、例の「相続人のための一体的解決論」を持ち出してきます。

「相続人の利益のために紛争の一回的解決」といっていますが、外国籍で年の差婚というだけでは、偽装離婚だとは立証は難しいから、遺産分割で駆け引き材料に使おうという魂胆はミエミエです。

そもそも、相続人の範囲については、例え全相続人の同意があっても、戸籍と異なるという合意自体ができません。合意できない以上、合意形成を目指す調停で協議すること自体が不可能です。残念ながら、ここを認識しておられる代理人は、ほとんどいません。

このあたり、理解してくれる代理人は少数で、「相続人の利益のために紛争の一回的解決」を繰り返し主張し、取り下げさせるためだけに、無駄な調停を2,3回繰り返すことになります。

相続人の範囲については、弊著「法律家のための相続判例のポイント」6頁~に詳細に記載してありますので、そちらをご覧ください。

内縁の配偶者

内縁の配偶者に相続権はありますか?

ありません。

内縁の配偶者は、協力扶助の義務がありますから、互いに助け合って生きていく必要があります。病気になれば介護しなければなりません。

しかし、相続になると、何の権利もありません。 自分の死後、内縁の配偶者の生活を守るためには、遺言で財産を遺贈するしかありません。ただ、実子や正妻が遺留分侵害額請求をした場合は、最大、その財産の半分の価格を相続人たちに支払う必要があります。

後妻の連れ子

被相続人と再婚しましたが、私の連れ子は相続権があるでしょうか?

ありません。

再婚した後の子供は相続権がありますが、連れ子は、再婚しても、再婚相手と当然に親子関係が生ずるわけではありません(727、809条)。養子縁組を改めてする必要があります。

代襲相続・再転相続・数次相続

代襲相続・再転相続・数次相続と何ですか?

被相続人より早く相続人が亡くなった場合が代襲相続、まず被相続人がなくなり、それから相続人が、単純承認とか放棄をする前に亡くなるのが再転相続、まず被相続人がなくなり、それから相続人は単純承認したけど遺産分割する前に亡くなったのが数次相続。887条2項は、「相続の開始以前に」と規定しているので、同時死亡の場合、代襲相続になる。

代襲相続・再転相続・数次相続については、弊著「法律家のための相続判例のポイント」12頁~に詳しく記載してありますので、そちらをご覧ください。

相続分放棄

相続分放棄とは何ですか?

その手続きにおいて相続分を放棄すること。

共同相続人が、その相続分を放棄することだが、家庭裁判所に対する意思表示であり、その効果は、その手続き限りのものです。実務では、相続分放棄をする場合、放棄者に家裁に備え付けてある所定の書式「相続放棄の申述書」を交付し、その書面に本人が署名・押印し、印鑑登録証明書を添付させて提出させて処理しています。

相続分譲渡

相続分譲渡とは何ですか?

積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的持分の移転です。

実務においては、必ず印鑑証明書付きの相続分譲渡書を提出させている。相続分放棄と異なり、実体法上の効果が生じます。

相続分全部譲渡をした相続人は、遺産分割の当事者になれません。譲受人は、必ず当事者として遺産分割手続に関与する必要があります。