遺言による債務免除と相続税

相続人が被相続人からお金を借りていた、
そういうとき、遺言で「もう返さなくていいよ」と債務免除した。
こういう場合、相続人は、何も遺産を取得していませんから、
民法的には、特別受益になっても、債務免除が遺産になることはありません。
遺産を相続していない以上、相続税はかからないように思われます。
しかし、相続税法は、担税力の増減で課税するか否かを判断します。
債務免除によって、債務を支払う必要がなくなった以上、
その分、担税力が増加しますから、相続税はかかります。
ただし例外もあって、
特定の場合においてその債務免除が遺贈によるものと見なされず、
課税免除される可能性もあります。
それは、免除を受けた相続人が弁済の資力がない場合です。
債務者の資力喪失が原因であれば、
みなし贈与、は適用されないことになります(相続税法第8条ただし書)。
条文は、以下の通りです。
当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
1.債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
2.債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によって当該債務の全部又は一部の引受又は弁済がなされたとき。
なお、同様に間違えしやすいものとして、
配偶者が配偶者居住権を相続や遺言で取得したけれど、
老人ホームに入るから放棄しますという場合も、
贈与税がかかりますから、要注意です。