遺言書

元東京家裁調停委員の視点

遺産分割調停で、弁護士が作成したにもかかわらず、奇妙な遺言書にでくわすことがあります。

特に、相続分の指定なのか、分割の指定なのか、これが不明な遺言書多いですね。

これが、遺産分割調停でよく問題になるのですが、この問題は、いまだに解決していません。遺産相続の基本的知識に欠けたまま無自覚で遺言書を作成すると往々にしてトラブルが起きます。

それと、遺言執行者でありながら、堂々と一部の相続人の代理人となって調停に来る弁護士がいます。執行者は代理人になれないとわかりながら、報酬にひかれて代理人になってしまうんでしょうが、ここは、きちんと自覚してもらいたいと思います。

皆さんに自覚していただきたいのは、遺言書は、遺言者が人生の最後に残す言葉であり、「遺言者最終意思尊重の原則」を最大限遵守しなければならないということです。よく推定相続人等を集めて家族会議を開き、そこで、遺言書を作成するということが行なわれたり、一部の推定相続人の圧力で遺言書が作成されたりしますが、これは、ある意味、高齢者虐待です。

詳しくは遺言書作成にあたっての注意点をご覧ください。

遺言書の作成をする場合は、以下の一覧表を参考にして作成してください。     

遺言の方式  必要要件
自筆証書遺言
(968条~)
全文の自書(例外 別添遺産目録)
日付の記載
氏名の自書
押印(認印・指印でも可)
加除訂正の方式順守
(①場所の指示と②変更した旨の付記③その個所に署名押印)(反しても加除訂正が無効になるだけで遺言そのものが無効になるわけではない)
不要要件①立会人②確認審判③契印・割印
検認 遺言書保管制度利用の場合以外検認は必要
公正証書遺言
(969条~)
証人二人以上の立会
口授(遺言者→公証人)
口述の筆記と読み聞かせ・閲覧(公証人→遺言者・証人)
遺言者・証人による承認・署名押印
公証人による付記・署名押印
不要要件 全文自筆 確認審判
検認 不要
秘密証書遺言
(970条~)
遺言者の証書への署名(自書)押印
遺言者による遺言書の封入・封印
公証人一人・証人二人に対する封書の提出と申述(①自己が遺言者である。②筆者(代筆者)の氏名・住所の2点の申述)
公証人による封紙への記載
公証人・遺言者・証人の署名(自書)押印
不要要件 全文自筆 日付 確認審判
検認必要 無効行為の転換(971条)に注意
一般危急時遺言
(危急時遺言・臨終遺言)
(976条~)
死亡の危急
証人3人以上の立ち合い
口授(遺言者→証人の一人)
口授を受けた証人による口授の筆記(遺言書作成)
読み聞かせ・閲覧(遺言者→筆記者以外の証人)
各証人の承認・署名押印
確認審判(20日以内)
不要要件 自筆 日付(最判S47・3・17 民集26-2-249)
検認必要・普通方式遺言ができるようになった時から6か月生存したとき失効。