遺言書の作成
遺言書作成にあたっての注意点
遺言書の作成は、一見簡単そうで、実は、結構、落とし穴だらけです。
まず、何が遺言できるのか、これが法定されていて、法定遺言事項以外は、いくら遺言書に書いても、効力がありません。例えば、浄土真宗の熱心な信者の方が、遺言書に自分の葬儀方法を細かく指示しても、効力は生じません。これは、死後事務委任契約の問題です。
遺言作成は、正確な言葉の意味を理解する必要があります。たとえば現金と預金は、全く異なる財産です。現預金という概念は、相続法にはありません。以前、弁護士さんが作成した遺言書で、現金は全て○○に相続させる、という遺言がありました。しかし、被相続人は、多額の預金はもっていたが、現金はほとんどなし。○○さんは、ほとんど相続できませんでした。
弁護士に頼むとよくトラブル化するのですが、張り切った弁護士が、やたらと複雑な原案を作成することがあり、そのために無効となったりすることがあります。どういう場合に遺言書は裁判所から無効と認定されるか、それをわきまえていないと、いざというときに無効となります。
遺言書の表現で、次のトラブルを誘発することもあります。Aに1/2、Bに1/2相続させると表現した場合、状況によっては、遺産分割が必要となり、次の紛争を誘発させます。
遺言内容もそうです。本人に頼み込んで書かせてしまえば大丈夫だと思い込んでおられる方がいます。遺言は、それほど甘くはありません。
税理士さんが作成した遺言書だと、ともかく節税意識が前面に出て、奇妙な法律構成をして、そのため、遺産紛争が逆にもめたということもあります。
改正相続法で認められた配偶者居住権や配偶者の居住用財産についての持ち戻し免除は、遺言書に「相続させる」と書くと、改正相続法が適用されなくなります。
債権の遺贈は、注意しないと相続人たちに不測の賠償責任を負わせることになります。
相続人には特定財産承継遺言(相続させる遺言)、相続人以外には特定遺贈という方式をとるのが従来の「常識」だが、現在は、別の観点から検討する必要があります。
このほかにも、遺産相続紛争、とりわけ遺言無効紛争について豊富な経験がないと、意外な落とし穴におちてしまうことがあります。
弊所では、下記著作を出版し、法律家の方々のために「他の先生の一歩先行く遺言書作成」のノウハウを公開しています。116頁以下に、遺言書の作成について詳しく記載してあります。
従来、遺言書に関する書籍は、ほとんど書式集だったのですが、ここでは、自筆証書と公正証書のすみ分け、特定遺贈・包括遺贈や特定財産承継遺言の使い分け、遺留分対策等、詳しく記載してあります。
