相続人による金融機関への取引経過開示請求(解約されている場合)

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使途不明金問題や特別受益の調査のために相続人が被相続人名義の預金口座の取引経過の開示請求をする。

これは、相続事件で日常的に行われていることで、最近は、相談者が自ら調査し、相談に来ることも珍しくない。相続人が単独で開示請求できる根拠は、預金契約上の地位を相続しているからである。仮に遺言でその預金が他の相続人が相続することになっていても、それは、預金債権だけの話であり、預金契約上の地位までは単独相続していないから、開示請求できる。

その根拠は、民645・656にある(最一小判平21・1・22民集63・1・22)

それでは、生前、被相続人が預金を解約してしまっていたような場合はどうだろう?民法645後段の規定によれば、仮に生前解約していても、開示請求できるはずだし、実務でも、そのように解されていた。ところが東京高判平成23年8月3日金法1935号118頁は、銀行が報告が完了した後は、過去の預金契約について、預金契約締結中と同内容の開示義務を負い続けると解することはできないと判示している。

この判例が独り歩きし、生前に解約された預金は開示請求できないという解釈がまかり通っているが、実は、この判決は、特殊な判決だと思ったほうがいい。上記東京高裁の判例は、没後、相続人が大量の取引経過の開示を請求した事例で、銀行業務に過大な負担がくるケースだった。そのため、銀行の負担を考えて判示したものである。むしろ、民法645後段の規定による限り、解約して報告した後も、民法645後段の規定により開示請求できるというのが従来の解釈(森田宏樹「預金契約の解約後の相続人に対する金融機関の取引履歴経過開示義務の存否」金法1953・14・2012年9月)であった。

ただ、この二つの説が結論が異なるかというと、おそらく、それほどの違いはない。開示請求できるという立場でも、東京高判平成23年8月3日の事案では、その大量の請求を根拠として、信義則違反か権利濫用で開示拒否を正当と判断したはずだし、開示しても銀行業務に負担のない事案では大阪高裁の立場でも、開示拒否を権利濫用と判断するからである。

実際実務でも、相続時より少し前に解約された預金口座は、取引経過の開示請求に応じているの。

されえいるがm

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この記事を書いた人

1951年新潟県出身。中央大学法学部卒業。東京弁護士会所属。1981年弁護士登録。1983年森法律事務所設立。家事事件・不動産事件等が中心業務。主な著作に『法律家のための相続判例のポイント』・『法律家のための遺言・遺留分実務のポイント』・『弁護士のための遺産相続実務のポイント』(いずれも日本加除出版)などがある。趣味はカメラを片手に旅すること。森法律事務所:東京都中央区新川2-15-3 森第2ビル TEL:03-3553-5916