森法律事務所から一言

特別受益は、遺産分割4大トラブルの一つですが、特別寄与ほどではないにせよ、

世間の常識と家裁の常識が食い違う分野です。

また遺産分割実務では、使途不明金との線引きが難しく、多くの弁護士が、

この区分を明確に意識しないまま主張を繰り返し、家裁を困惑させています。

詳細は、弊所代表の下記DVD第二巻で説明しています。

「誤解の多い遺産分割調停 弁護士が勘違いする実務のポイント」

 


特別受益問題 Q&A

(注)以下のQ&Aは、主として東京家裁・横浜家裁の遺産分割専門部の基準に基づいて記載されています。この基準が、全国のどの裁判所でも通用するわけではありません。

特別受益とは何ですか?
遺産分割の計算にあたって持ち戻す「遺産の前渡し」です。
共同相続人の中に「結婚や養子縁組のための贈与その他生計の資本としての贈与」があるとき、それは、「遺産の前渡し」ですから、遺産分割にあたっては、それを持ち戻して 遺産分割をしないと不公平になります。
遺産分割にあたって持ち戻す「遺産の前渡し」を特別受益と言います。
特別受益は遺産分割にあたりどのように考慮されますか?
特別受益の金額を、相続時の遺産に持ち戻して加算し、そのうえで各人の具体的相続分を算出します。
例えば、被相続人は父Xで相続財産は2000万円、相続人は長男Aと次男Bとします。 この場合、AとBは、2000万円を半分ずつ取得しますから、各人の取り分は各1000万円です。
しかし、もしAが、生前父Xから1000万円の贈与を受けていたとすると、それは「遺産の前渡し」と考えられますから、この贈与金1000万円を遺産分割にあたり考慮に入れないと不公平になります。そこで、遺産総額2000万円に1000万円を加算すると「みなし相続財産」は、3000万円になります。
これを法定相続分で割ると各人の具体的相続分は、各1500万円になります。
しかし、Aは、すでに1000万円の遺産の前渡しを受けていますから、今回の遺産で取得できる金額は500万円になります。
遺産分割としては、Aが500万円、Bが1500万円を取得することになります。
特別受益に該当するものは、どのようなものですか?
「遺産の前渡し」と思われるもので、かつ「生計の資本」の贈与といえるものです。
条文では、遺贈と婚姻や養子縁組、生計の資本のための贈与とありますが、実務上、 特別受益として問題になるのは、「生計の資本」としての贈与です。
遺贈は特別受益になることに問題はなく、逆に、「婚姻や養子縁組」のための贈与は、現在では、実務的に特別受益が問題になることは、あまりありません。
結婚のための結納金、挙式費用、持参金、支度金は特別受益になりますか?
原則としてなりません。
「婚姻のための贈与」は、立法当時は、「家を継がないから、その代わりに支給する」というケースが多く、まさに「遺産の前渡し」でした。
しかし、結納金や挙式費用は「遺産の前渡し」とは言えず、また持参金も親の扶養義務の履行とみなされる場合が多く、やはり特別受益とはいえません。
ただ、多額で、「遺産の前渡し」的要素が多い場合は、特別受益となります。
私は高卒ですが、兄は4年制の大学を出ています。また姉は高卒ですがロンドンに1年間音楽の留学をさせてもらっています。兄と姉の学費は特別受益になりますか?
原則としてなりません。
親は子供の特性に応じて教育をしますから、大学を出たとか、海外留学をしたというだけでは、親の扶養義務の履行にすぎず、特別受益とは言えません。
しかし、留学でも遺産総額に比して高額な留学費用がかかった場合、大学でも留年・浪人を繰り返していた場合、私立大学医学部の入学金は、扶養義務の履行というレベルを超えており、特別受益になります。
兄は、以前、女性問題でトラブルを起こし、被相続人に賠償金を肩代わりして支払っても らいました。特別受益になりますか?
原則としてなりません。
特別受益は、「生計の資本としての贈与」つまり、生活資金の援助でなければなりません。
女性とのトラブルによる賠償金の支払いは、生活資金の援助ではなく、生計の資本の贈与とはいえません。
兄は、被相続人所有のアパートに永年無料で住んでいました。 家賃相当額は特別受益になりますか?
いかなる場合も、なりません。
特別受益は、「遺産の前渡し」を遺産分割時に持ち戻して計算する制度ですが、無料でアパートに住んでいたからと言って、家賃相当額が遺産の前渡しとは言えません。
ただ、例外的になる場合も想定できないではないという見解もあります。
被相続人の遺産は、総額で1億円。相続人は長男Aと次男である私B。遺産は1億円ですが、長男Aは別に父のかけていた生命保険金5500万円を受領しています。この生命保険金は特別受益になりますか?
なる場合とならない場合があります。
生命保険金は、贈与でも遺贈でもありませんから、原則として特別受益になりません。 しかし、「保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法 903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、」「当該死亡保険金は特別受益に準じて持ち戻しの対象となります(最高裁H16・10・29)。
実務では、原則として、この比率が50%未満の場合は特別受益に準ぜず、60%超のときは特別受益に準じ、50~60%のときはケースバイケースで処理しています。
しかし、単に比率だけで決めず、同居の有無や被相続人に対する貢献度、相続人の生活状況等の諸事情を総合的に判断しています。
被相続人の遺産は、総額で1億円。相続人は長男Aと次男である私B。遺産は1億円です が、長男Aの配偶者甲、子供乙は、別に被相続人から各1000万円もらっています。この各1000万円は、長男Aの特別受益になりますか?
原則としてなりません。
現在の家庭裁判所は、特別受益者か否かの判断を厳格に解しており、贈与等を受けた者が配偶者や子供等の生計同一者であっても、相続人でないときは、特別受益には該当しないと判断しています。
ただ、単なる名義貸し的な贈与は、特別受益になる場合もあります。
被相続人は父X。相続人は長男Aと長女B。長女Bは、離婚して母子家庭で、生活が苦し く、父Xの承諾の下、父の預金口座からお金を引き出していました。
父の死後、長男Aからこの引き出し行為につき、東京地方裁判所に不当利得返還訴訟を
提起されました。返金しなければならないのでしょうか?
返金の必要はありません。
実務上、多くの弁護士が、この特別受益と使途不明金の問題を混同しています。使途不明金として訴訟提起できるのは、被相続人の同意なく勝手に引き出した場合に限られます。
同意があれば贈与ですから、不当利得、不法行為の問題にはならず、特別受益の問題と して遺産分割手続きで考慮されます。
ただ、本件では、遺産分割の問題として処理しても、特別受益とは言い難いでしょう。