森法律事務所から一言

世間で「遺産」とひとまとめにいう財産の中には、本来、遺産でないもの、また遺産であっても、遺産分割の対象になるものとならないものがあります。

遺産相続紛争では、この遺産の分類を効果的に駆使することで、紛争を自己に有利に解決できるケースが少なくありません。実は、分割対象財産の範囲の確定は、遺産分割の天王山とでもいうべき大切なところなのです。

この点について専門的知見を有する弁護士は少数です。遺産相続紛争取り扱い件数国内トップレベルの当事務所では、多数の取り扱いから、効果的に戦略を立てることができます。

遺産相続紛争で困っておられる方は、是非一度、当事務所においで下さい。

 

 


遺産の範囲 Q&A

(注)以下のQ&Aは、主として東京家裁・横浜家裁の遺産分割専門部の基準に基づいて記載されています。この基準が、全国のどの裁判所でも通用するわけではありません。

詳細は、弊所代表の下記DVD第一巻で説明しています。

「誤解の多い遺産分割調停 弁護士が勘違いする実務のポイント」

[遺産の帰属について争いがある場合]
兄は、私名義の不動産を被相続人の不動産と主張して遺産に組み入れるよう主張しています。遺産分割調停で調整してくれるでしょうか?
原則として、まず地裁に訴訟提起をし、判決をもらってから、遺産分割調停を申し立てましょう。遺産分割調停は、遺産であることに争いのない遺産を分割するところです。 遺産かどうかについて争いがある場合は、まず地方裁判所で、誰のものかを明確にしたうえで、遺産分割調停を申立てます。
遺産分割の前提問題(遺産や相続人の範囲)で深刻な争いがあるにも関わらず、強引に 審判移行を求めたり、調停の継続を希望した場合などは、分割禁止の審判を出したり、 調停をしない措置をとる場合があります。
[遺産だが遺産分割の対象にならないもの]
遺産は貸付金1000万円だけです。相続人は兄と弟で、兄は、生前父から1000万円もらっています。兄には、1000万円の特別受益があるから、遺産は弟が全部取得することになるのでしょうか?
兄と弟で500万円ずつ相続します。
兄に1000万円の特別受益がある以上は、本来なら、分割計算にあたっては、この1000万円を持ち戻し、計算します。
貸付金1000万円+生前贈与1000万円=2000万円となり、この2000万円を二等分すると、 各人が1000万円になります。しかし、兄は、生前1000万円を貰っているので、本来なら、 弟が全遺産1000万円を取得することになります。
しかし、全ての遺産が遺産分割の対象になるわけではなく、対象になるのは、[数量的に分割できない遺産]だけです。[数量的に分割できる遺産]は、遺産分割の対象にならず、 相続と同時に、法定相続分に従い、当然に分割されます。
貸付金は、遺産ですが、数量的に可分のため、遺産分割の対象にならず、相続と同時に、 法定相続分に従って分割されます。
遺産分割の対象にならないので、兄と弟で500万円ずつ相続することになります。
ただし、当事者全員で貸付金を遺産分割の対象に加えることに同意すれば、遺産分割の対 象になります。その場合は、兄が貸付金1000万円を相続することになります。
[全相続人の同意があっても遺産分割審判の対象にならないもの]
被相続人は、ローンで賃貸マンション一棟を建て、ローンを完済しないまま死亡しました。
相続人は、兄と弟ですが、兄がマンションとローンを承継し、その代わり弟に代償金を支払うことでは異論はないのですが、代償金の額をめぐって合意ができません。
代理人弁護士も、調停委員会も、審判で裁判所の判断に委ねるといっていますが、それでよいのでしょうか?
審判では、問題を複雑化させるだけで、協議で解決するしかありません。
ローンは負の遺産ですが、遺産分割の対象にならず、相続と同時に法定相続分に従い分割されます。しかも、預金と異なり合意しても遺産分割の対象に加えることはできません。 本件では、もし審判に移行して裁判所の判断を仰ぐとしたら、ローンを全く考慮せず、マンションだけを分割対象として審判します。
問題を複雑化するだけです。
なお、協議で解決できても、その協議は、当然には金融機関に対抗できませんから、遺産分割とは別に、金融機関と話し合いをしなければなりません。
[遺産になったりならかったりするもの]
被相続人は生命保険に入っており、その保険金が1000万円あります。これは、遺産ですか。
遺産になる場合とならない場合があります。
生命保険の受取人が決まっていれば、それは、相続財産ではありません。
受取人は、保険契約に基づいて保険金を取得するのであり、相続により取得するもので はないからです。
受取人がいなくても、多くの場合は、約款で誰が受け取るか規定されています。この場合も、約款で、指定者が取得するのであり、遺産にはなりません。
受取人がおらず、また、約款にも規定がない場合のみ、遺産になります。
税法上の遺産と民法上の遺産は、違いますか?
違います。
遺産分割調停では、代理人弁護士を含めて、よく相続税申告書の遺産目録をそのまま丸写しにして提出される方が非常に多いです。
しかし、遺産相続の対象になる遺産は、あくまでも、相続によって取得した遺産と相続によって負担した債務です。
これに対し、相続税の対象になる遺産は、あくまでも、相続を契機として取得した財産であり、相続を契機として負担した債務です。
例えば、葬儀費用は、相続後に発生したものですから、相続により負担した債務ではなく相続債務ではありません。しかし、相続をきっかけとして負担した債務ですから、相続税の計算に当たり相続債務として考慮されます。
生命保険金も、受取人が指定されている場合は、相続で取得したものではなく、保険契約で取得したものですから相続財産ではありませんが、相続を契機として取得した財産ですから、税法上は、遺産として計算されます。