不動産の私的入札

遺産分割の一態様である換価分割の場合は、最終的には、不動産を売却することになる。その売却方法について、競売と任意売却があるが、任意売却方法には、不動産仲介業者に頼んで売却する方法と私的入札の方法がある。
私的入札とは、要するに私的な競売であり、代理人弁護士が作成した一定のルールの下で業者に入札を呼びかけ、入札した業者の中から、一番高額な業者が落札するという制度である。
業者に仲介を依頼するか私的入札を試みるかの分かれ目は、その物件の価格・規模からしてエンドユーザーが買う余地がないかどうかである。業者の買取だと、エンドユーザー価格から業者の利益を差し引いた価格が購入金額となるから、どうしてもエンドユーザーに売却するより安い「業者買取価格」になる。私的入札を試みるのは、買い手が業者しか想定できない物件である。普通の居住用マンションなどは、仲介業者を通してエンドユーザーに売却したほうがいい。時々、通常の居住用マンションを、どうしても私的入札で売却するといってきかない代理人がいて閉口することがある。エンドユーザーに売却できる物件をなんで業者買取価格で競わせなければならないのか。
遺産分割をしていると、私的入札を試みる物件かどうかは自ずとわかる。どこから情報が漏れるのか、頼みもしないのに、事務所や依頼人のところに「弊社にまかせてほしい」と盛んに連絡が来る。売れば、最低でも数億円の物件で、たいていは更地売買である。価格が高ければ高いほど連絡も激しくなる。
私的入札を試みる場合は、代理人間で協議して私的入札要綱(入札期間、開札場所と日時、売買の条件等)を定め、それを業者に送付する。業者は各代理人に入札価格を封書で送付し、各代理人は、所定の日時に所定の場所で、入札希望不動産業者立会いのもとで開札する。あまりに業者がうるさいときは、最低売却価格を決めると、結構な業者が手を引いてくれる。
入札は、資金力の豊富なきちんとした業者に限定した方がいい。びっくりするような価格で入札したものの、そのまま連絡が取れないという中小業者もいるからである。こういう業者は、ともかく「権利」だけを手に入れ、その後、金融業者や仲介業者をまわって「転売」を試みるが、たいていは、失敗してそのまま音信不通となる。
その際の入札要綱は、今度出版する書籍で開示したいと考えている。
なお、個人的には、私的入札よりは裁判所の競争入札のほうがいいのではと考えてもいる。競売の場合、すべての業者が参加できるので、かなりの高価格になる。東京の場合は、競売だと安くなるという事実はない。ただ、多くの代理人や依頼者が、競売だと安くなると信じ込んでいるので、それを提案しても、反対されてしまう。
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